2016年10月14日

醤油のインチキ


 私はあまり外食はしないのだが、たまに飲食店に入ることはある。超高級店でないかぎり、飲食店には醤油がテーブルに置かれている。例えば回転寿司とか。
 あれは本当に醤油なのだろうか?

 それから、スーパーや「小僧寿司」のようなできあいの寿司を売っている店の寿司パックには、しょうゆがついてくる。あるいはスーパーで売っている納豆にも、小さなだし醤油がついている。コンビニ弁当にも入っている。あれは本当に醤油なのか?
 まだある。出来合いの総菜で、野菜や魚の煮物に使われる醤油は、本物か? ラーメンの調味料として使われる醤油は?

 私は疑ったほうがいいと思っている。
 いわゆる「寿司(鮨)屋」は、ちゃんとした鮨を出すから、満足していただき、それなりのカネをとる、という姿勢だったと思うが、スーパーとかできあい寿司チェーンのパック寿司は、「安い」が売り物なのである。必然、いかにコストを抑えて、消費者に「安いから買おう!」と思わせるかが勝負になる。
 だから寿司は醤油なしでは食えたものではないから、どうしても醤油をつけないとパック寿司は売れない。しかしコストはできるだけ抑えたいから、格安のインチキ醤油を使う。

 …と、私がパック寿司の社長なら考える。味より価格が勝負なのだから。大量に買ってくれる大衆はバカだから健康のことなど考えないし、「健康によい」とか「体に優しい」とラベルを貼りさえすれば済んでしまうものだ。

 本来の醤油の製造工程は、大豆と小麦に麹を加えて発酵させるものだ。麹が出す酵素に大豆のタンパク質を分解させてアミノ酸を作らせるのだ。これには時間がかかる。
 こうした正統な、伝統的な醤油作りならまず問題はないけれど、資本主義は恐ろしいもので、いかに時間をかけず安くつくって、大量に売るかを追及する。化学的にみれば、醤油はタンパク質をアミン酸に変えるだけの工程である。素材が何であれ、タンパク質をアミン酸に変えればいいだけの話になる。
 昨今の発泡酒や第三のビールと同じインチキだ。

 どうするかといえば、タンパク質に塩酸を加えるとたちまちアミノ酸に分解される。われわれの胃のなかでもこういう化学反応が起きている。そうすれば麹も酵素もいらない。
 これでインチキ醤油が作られるのだ。

 正統醤油は丸大豆が原料になるが、インチキ醤油はタンパク質でありさえすればいいので、脱脂加工大豆を使うのだ。これは食用油を搾った後の、豆カスである。戦時中の食糧難時代に考案された。
 現在では、醤油の80〜85パーセントがこの脱脂加工大豆である。いかにも丸大豆に含まれる脂肪分はなくても醤油はできるが、風味やまろやかさがなくなる。
 パック寿司やパック納豆のおまけ醤油は、風味もコクもまろやかさもない。なんとなく醤油らしい色のついた液体でしかない。

 脱脂加工大豆から油を搾る際に、圧搾して油をとるなら、これは物理的でなんら支障はない。けれどたいていの食用油がそうであるように、大豆の場合も薬品を使って脂肪を分離させる。ヘキサンという有機溶媒の薬品だ。
 ヘキサンは揮発性が高いから食品に残存しないと言われるけれど、実は毒性がある。マウスを使った実験では、吸わせると麻酔がかかったようになり、濃度を上げれば痙攣を起こして死ぬ。
 食品添加物の使用基準としては、最終的な食品に残存してはならないとなってはいるが、あくまで基準である。脱脂加工大豆の残存の危険性はゼロではないと言われる。

 ついでながら、先に述べたように、食用油はスーパーに置いてあるような(テレビCMで宣伝しているような)大手メーカーの商品は、みんな搾った油ではなく、薬品で処理した油だから、危ない食品である。やれ「油っこくない」「オレイン酸が多い」「さらさら」「栄養機能食品」「コレステロール ゼロ」などと美辞麗句を並べてあっても、危ないものである。
 かといって、昔のように搾った新鮮な食用油を量り売りしている商店など、ほとんど絶えてしまっているから、怖い話である。

 さて。
 脱脂加工大豆(豆カス)を素材にしても、麹を使って発酵させればまだしもだが、冒頭に書いたように、タンパク質に塩酸を加えるだけでアミノ酸に分解される方法を使えばもっとコストを抑えられて簡便に醤油(?)ができる。
 ただしそれだけでは、麹や酵素がつくりだす自然な色や風味、うまみ、とろりとした味わいなどはできない。
 それで大加工が行なわれる。

 色はカラメルでつけて、黒くする。
 甘みはサッカリンやステビアをぶち込む。
 うま味はグルタミン酸ソーダ、すなわち「味の素」と同じ化学物質をいれる。
 とろみ、粘り気をだすカルボキシルメチルセルロースなどの増粘多糖類をしのばせる。
 さらに合成されたものは腐りやすいので、防腐剤(安息香酸)を加える。

 安息香酸は抗菌作用があるとのことで、清涼飲料の保存料としても使われる。安息香酸ナトリウムと、合成着色料であるタール色素とを同時に摂取すると、注意欠陥・多動性障害の子供には危険であるとされる。さらに、清涼飲料水中に安息香酸とアスコルビン酸が共存する場合には微量のベンゼンが生成する可能性があるというのだから、うっかりインチキ醤油を飲んだあとでアスコルビン酸を摂取したら、胃の中で猛毒のベンゼンが発生したなんてことにならないのだろうか?

 こうなるともう醤油とは言えない「黒く甘い毒水」でしかない。
 だから、もしこのブログを読んでいる方で、どうしても昼食はコンビニ弁当になるという方がおられたら、醤油くらいは会社の冷蔵庫にでも「マイ醤油」として入れておいて使い、弁当についてくる醤油モドキは捨てるに越したことはない。

 しかし、いくらこんなことで警鐘を鳴らしたところで、大衆はきっとこういう。
 「そんなことを気にしていたら、何も食べられない。国が安全だと保障してくれている食品だし、新聞テレビでもダメだといわないのだから、普通に食べればいい」
 どうぞお好きに病気になり、頭も悪くなってください、とお答えするしかない。




posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☀| Comment(7) | エッセイ | 更新情報をチェックする