2016年12月29日

プロ野球選手に筋トレは有害か(2/2)


《2》
 昨日紹介したイチローとダルビッシュの話では、ダルビッシュのほうが間違いであるが、彼はすでにして身長、体格がアメリカ人並みであるから、ウエイトで筋肉を付ければ球速が増すという効果は得られるだろう。大谷翔平投手もウエイトは有効だと言っているようだが、彼らに共通しているのは長身だということだ。
 果たして40歳を超えてまで選手生命が続くか、である。

 私はとりあえずはイチローのほうに軍配はあげるけれど、彼も理論的には正しいとは言えない。彼ももともとの才能とか持って生まれたカラダとかがあると思い込んでいる観念論者である。
 イチローは筋肉は鍛えられるが、関節や腱は鍛えられないと言うが、それは間違いである。鍛え方はある。わが流派ではちゃんと教わる。

 プロ野球選手が筋トレに励みたくなるのは、おそらくこういう事だろう。例えば投手が筋肉を5キロ付けたら、球速が130キロから140キロになったとする。これは本当だろう。では、と、筋肉をもう5キロ付けたら球速が145キロ出るようになった。これも良しとしよう。では大谷投手みたいに常時150キロが出せる投手になりたいから、筋肉をもう10キロつけたとする。球速がそうやって正比例して上がっていくだろうか。

 そこに量質転化があることを彼らは考えない。量の積み重ねが常に量の上昇になるとは言えないのだ。体が壊れるという質の変化をもたらしてしまうからだ。

 問題は、筋肉と一緒に関節や腱、それに骨、さらには神経や血液や…を鍛えないことがバランスを壊し、ケガの元になるのである。
 つまり「人間とは何か」の一般論がないから、無駄な試行錯誤をしなければならず、多くの選手はその過程で目覚めることなく失敗していくのだ。
 人間は筋肉だけで動くものではない。骨も神経も関節も…が連動して全部が合成されて鍛えられなければいけないのに、ダルビッシュのように筋肉だけ大きくすればいいと考えてしまう。

 先に大谷やダルビッシュならある程度は筋トレも有効と言ったのは、彼らは長身ですでに体重も重く、ランニングだけでも骨が一緒に重みと衝撃で鍛えられるからだ。だから筋肉と一緒に骨も丈夫になる。
 イチローは野球選手としては小柄なほうだから、ランニング程度では骨が鍛えられない。ウエイトでは筋肉だけが大きくなるだけで骨がそれに見合って丈夫にならない。それがケガの原因になっていく。

これは「虎ノ門ニュース」で武田邦彦が解説していたが、新幹線のスピードはモーターの性能をあげればまだ速くなるが、一番の鍵は車体の車軸になるという。車軸が高速回転に耐えられない。そこが限界になってしまうそうだ。
 つまり、モーターが筋肉、車軸の強度が骨の強靭さと譬えられよう。

 今以上に新幹線のスピードを上げるには、レールの上を走るのでは振動で車軸が壊れてしまうから、これ以上はリニアにして、浮かせて回転する車軸をなくすしかないのであろう。

 ほかにも神経も血液も、筋トレで鍛えられる神経や血液と、実際のスポーツで使われるあり方に見合った神経と血液になるとは違う。そんなことはダルビッシュ投手が読んだ市販されている本には解説されていないはずだ。気の毒に。

 その意味では、イチローが言った「トラやライオンは筋トレをやらない」は正しい。トラやライオンは、全体で強力なのであって、局所だけ強いのではないからだ。バカバカしいから取り上げないが、ダルビッシュはこの件についても反論しているが、ナンセンスである。

 また、野球は結構特殊な運動が多い。走者は反時計回りに走るしかない。内野手は1塁手以外はみんな右手でファーストに投げなければいけない。投手はむろん右利きは徹底して右だけで投げる、というように。全方向的に筋肉は動かさない歪んだスポーツである。
 これもまたウエイトだけやっていると、逆方向や瞬間的に力を入れたり、スピードをあげたりに対応できるカラダになり損なう。

 野球選手のケガを減らし、寿命を長くするには、1試合ごとに逆方向をやればいいだろう。打者は打ったら3塁へ走り、野手はゴロを取ったら3塁へ投げる。右打者は試合事に左打席に立つ。そんなことでもすればいくらかは有効であろう。

 野球はバランスとリズムとタイミングだと昔を知るコーチなどは指導するが、現役の子はウエイト信仰が強く、なかなか言うことを聞かないようだ。
 清原とか巨人の阿部は体を大きくすればいいとしたから、ケガに泣かされ失敗した。
 そのバランス、リズム、タイミングと大まかに言われるものは、子供のころに培われるのである。むろん野球を始めてからつくるのは当たり前だが、大本は赤ん坊のときの基本中の基本にある。

 そこをトレーナーもコーチも振り返らない。甲子園でスターだったのだから何をいまさら「立つ」「歩く」なんてことを言うのか、となる。誰でもほとんどは、幼児が立てばいい、歩けばいいである。本人も立てるからいい、歩いているからいい、で貫く。本当はだれもが自己流だというのに。
 その赤ん坊のときにちゃんと、バランス、リズム、タイミングができることが、将来の運動選手のレベルや寿命を決めているのだろう。

 昔日、日本では徴兵制で誰もが軍隊で行進させられた。日にち毎日、行軍、行軍…。一糸乱れず、繰り返し歩き方を同じにさせられる。あれで昔は相当程度、自己流だった立ち方、歩き方が矯正されたはずである。しかも重い装備を担いでだから、バランスもよくなる。
 だから兵隊に行くとアタマが良くなった。

 こういうところにも徴兵制復活の意義はある。何度も言うが、徴兵制を軍国主義の復活だとか、あれは人権無視の苦役だという奴はアホである。プロ野球選手は入団したら、早速バットを振って、ピッチングをして…が当たり前のようだが、まずは行進を連日やらせて、歩き方の基本を徹底的に叩きこんだ方がいい。それも手に何かそれほど重くなくていいから物を持って歩くことだ。それも足だけ動かすのではなく手も同時に動かすことを連動してやらせられる。

 新入団選手をまず1月の寒いなかで、三千メートル走なんかやらせて、誰が一番速かっただの、身体能力が優れているだのと新聞記事になっているようだが、愚かな筋肉信仰である。
 本当はスピードを競わせるべきではなく、正しい姿勢でどう走るかをまずは徹底して教えるべきであり、また関節を鍛えるランニング、骨を鍛えるランニングと、いろいろ指導するほうが良い。

 冬のさなかは、短パンで走るのはどうかしていて、頭から足先までしっかり温かい服装にし、暑いところと寒いところのアンバランスが起きないようにすることがケガの防止なのであるが…。
 2月からのキャンプで早く1軍で目立ちたいとばかりに、寒いところでバットを振ったり、ピッチングしたりするのは愚かである。

 以前、天寿堂稲村さんの弁証法ゼミで、稲村さんがまず受講生たちに行進をさせたら、一斉に受講生から反発があった。「なんでいきなり行進なんだ? 弁証法とも指圧とも関係がない」と。これはきちんと目的を説明しない稲村さんがいけなかった。

 正しい立ち方、歩き方ができるということは、頭脳もその正しい、バランスのとれた肉体を統括するように発育発達するのであるから、赤ん坊のときから(いつからでもだが)この運動の基礎中の基礎を疎かにしてはまっとうな脳細胞の発育は望めない。つまりアタマはよくならない。受験で記憶力は身に付いても。記憶力や知識を貯め込む能力は、脳細胞にとっては一部の機能でしかない。

 こういうことをわが流派では教わっている。
 カラダをきちんと病気にならないよう、ケガしないように統括し、健康で感性豊かで、しっかりものを考えられる実力をつけることなのである。

 そのスタート地点が、赤ん坊のときの幼児語であったり、ハイハイや立ち方や歩き方なのである。



posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☀| Comment(0) | エッセイ | 更新情報をチェックする