2014年11月17日

エコノミック・ヒットマンから見える日本の近代(1/2)


《1》
 B4様から推薦していただいた『エコノミック・ヒットマン』(東洋経済新聞社)を読了した。サブタイトルが「途上国を食い物にするアメリカ」である。2004年に米国で出版され、驚異的ベストセラーとなったそうである。
 世界は陰謀に満ちていると承知してはいるが、この本は聞きしに勝るその実態が、当事者の口から赤裸々に語られる。

 著者ジョン・パーキンス氏は、アメリカのコンサルティング会社(メイン社)のチーフエコノミストで経済・地域計画担当マネージャーだったが、裏の顔はアメリカの工作員でエコノミック・ヒットマン(EHM)として働いていた。
 仕事はずばり、途上国を返済不能の負債の罠にはめ、米国と現地途上国の一部富裕層のみを富ませることだった。

 まず、翻訳者の古草秀子氏の「訳者あとがき」から引用させてもらおう。
     *     *     *

 本書は、世界経済の裏面で暗躍しつつ良心の呵責に苦しんだ、ひとりの男の告白の書だ。(中略)
 「エコノミック・ヒットマンとは、世界中の国々を騙して莫大な金をかすめとる、きわめて高収入の職業だ」と彼はいう。その手口はじつに巧妙だ。典型的な方法として、彼らはまず、石油をはじめ豊富な資源を持つ途上国の指導者に対して、世界銀行の融資を受けて国家を近代化すれば飛躍的な経済成長を達成できると言葉巧みにもちかけ、その国に巨額の債務を負わせる。

 じつのところ、融資された金は巨大なインフラ建設を受注するベクテルやハリバートンなどの米企業と、現地の利権を握っているほんの一部の富裕なエリート層の懐へと流れる。庶民の暮らしはまったく良くならない。それどころか、債務はとうてい返済できず、貧しい者はさらに貧しくなる。

 さらに、債務国の政府は負債の罠に絡めとられて、天然資源や国連の議決権を奪われたり、米軍基地の設置を強いられたりすることになる。グローバル化が進む現代では、エコノミック・ヒットマンの活動は質量ともに驚くべき次元に到達しているという。まったく恐ろしいからくりだ。

 もっと恐ろしいことに、もしエコノミック・ヒットマンが途上国の指導者の取りこみに失敗すれば、さらに邪悪なヒットマンである「ジャッカル」の出番となり、それも失敗すれば軍隊が出動するのだと、パーキンスはいう。インドネシア、サウジアラビア、パナマ、エクアドル、イラクなどの例をあげて実体験を語る彼の告白は、説得力にあふれている。

 パーキンスの物語は、映画のストーリーを思わせるような人間ドラマだ。彼はニューハンプシャー州の田舎町に生まれ、厳格な両親のもとに育った。ボストン大学を卒業してまもなく、成功を目指す野心を抱いた若者だったパーキンスは偶然に導かれて、思いもよらぬ人生を歩むことになる。

 国家安全保障局(NSA)に適性を認められてスカウトされ、その手配によって国際的なコンサルティング会社であるメイン社に雇われ、グローバリズムの闇の部分を担うエコノミック・ヒットマン(EHM)に仕立てあげられるのだ。
 (引用終わり)
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 これはアメリカと巨大企業の陰謀であり、公表されない実態であるだけに、彼パーキンスは命懸けで告発している。
 パーキンスは、自分の役割はエコノミストという肩書きの裏で第三世界の指導者を抱きこんで、自国民をないがしろにして、米国の政府と企業にとってのみ好ましい政策をとるように誘導することだったと告白している。

 その途上国の電力需要を過剰に膨らませたデータをつくって、巨額の投資を米国から受けるように導く。
 パーキンスはこうつづる。

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 結局のところ、世界帝国はドルが世界の基準通貨として機能している事実と、米造幣局がそのドルを印刷する権利を有しているという事実とに、大幅に依存している。だからこそ私たちは、エクアドルのような国々に、返済不能に陥ることを承知のうえで資金を貸す。

 それどころか、不払いこそが私たちに権力をもたらし、債務国に無理難題をふっかける根拠になるのだから、相手が債務を履行することを望んでいない。通常の状況なら、それでは自分の資金をしだいに失っていく危険を犯すことになるし、あまりに多くの債務不履行には耐えられなくなる。

 だが、私たちが置かれている状況は普通ではない。アメリカは金で保証されているのではない紙幣を印刷する。じつのところ、通貨価値を支えているのは、世界に誇る経済力ヘの自信と軍事力、そして私たちのために築き上げた帝国の資源以外にはないのだ。

 紙幣を印刷する能力は、絶大な力を与える。それはさまざまな意味合いを持っているが、なかでも、決して返済されない借金を生み出しつづけうるということは重要だ。その一方で、自身が巨額の借金をすることが可能だということも意味している。

 2003年の初頭までに、アメリカの国家債務は六兆ドルという信じがたい金額を超え、その年が終わる前に7兆ドルに達すると算出された国民ひとり当たり、ざっと2万4000ドルになる勘定だ。この債務の多くは、アジアの国々、とくに日本と中国に負っている。電子機器や、コンピューター、自動車、家電、衣料などの消費財をアメリカや世界の市場で売って蓄財した資金を使って、米国債(つまりは借用書)を購入した国々だ。

 世界がドルを基準通貨として受け入れているかぎり、この巨額な負債は、コーポレートクラシーにとって深刻な障害とはならない。だが、もし別の通貨がドル伝って代わるようなことがあれば、そして、もしアメリカの債権国のどこか(たとえば日本や中国)が、債務返済を求める決定をしたら、状況は劇的に変化する。アメリカは一瞬にして、きわめて危うい状況にいることに気づくだろう。
 (引用終わり)
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 コーポレートクラシー(corporatocracy企業独占主義とも訳される)とは、米国が世界帝国建設を推進する動きのなかで、大企業や銀行や政府などの集合体を言うのである。コーポレートクラシーは経済的・政治的な力を利用して、教育や産業界やメディアがこの誤った認識と必然的結果の両方を支持するよう努める。

 パーキンスはわざわざ「コーポレートクラシーは陰謀団ではない」と断っているが、どうみても陰謀集団だ。この陰謀は、決してアメリカ合衆国政府は表に出ないで、私企業が独自勝手にやっている経済活動だと思わせている。
 しかし、途上国のどこの指導者も、からくりはわかっている。
 わかっているが、受け入れなければ追放されるか殺されるかだから、言いなりになるしかない。

 コーポレートクラシーの暗躍の結果、途上国のみならず、「現代人の文化は際限なくどん欲に燃料を消費する巨大機械と化したかのごとき状態にまで陥ってしまい、行き着く先はといえば、目につくものはすべて消費して、最後には自分自身を呑みこむしかなくなってしまうだろう」と著者パーキンスは述べる。

 本書に登場する途上国は、パーキンスが関わった国々で、エクアドル、インドネシア、サウジアラビア、コロンビア、パナマ、ベネズエラなどの様子が書かれているが、わが国にも当てはまることなのだと思わされる。
 竹中平蔵あたりが、エコノミック・ヒットマンなのであろう。

 中南米は、アメリカの裏庭と言われ政治経済でアメリカの支配を免れない。しかし時に、あまりの収奪に憤慨して反米の指導者が登場する。本気で自国民の暮しを良くして、天然資源を自分たちの手に取り戻そうとする英雄が出てくる。

 例えば、パナマのオマール・トリホス大統領、ベネズエラのウゴ・チャベス大統領、エクアドルのハイメ・ロルドス大統領、チリのサルバドール・アジェンデ大統領、グアテマラのアルベンス・グスマン大統領、ハイチのジャン=ベルトラン・アリスティード大統領、ホンジュラスのマヌエル・セラヤ大統領などである。
 みんな民主的に選ばれた大統領なのに、コーポレートクラシーに反抗したばかりに、失脚させられたり生命を縮められたりした。

 日本も何人もの首相や閣僚が同じ目に遭わされてきた。
 
 他事ながら今年も日本のプロ野球界から、阪神の鳥谷やオリックスの金子らがアメリカ・メジャーリーグに行くとか言われる。アメリカは野球の本場だから、と言うようだが、要するに日本にいるより向こうのほうがカネを稼げるからである。

 プロ野球選手に、巨額のマネーを払えるアメリカという国がなぜそんな破天荒なビジネスができるかといえば、アメリカが途上国や日本や支那からカネをふんだくり、貧しい人たちに塗炭の苦しみを与えているカラクリがあるからだ。
 
 人様に自分のプレーを見せてカネをもらって何が悪いと彼らは言うのだろうが、いくらかでも良心があれば、自分がじかに途上国の貧しい人たちを苦しめていなくとも、片棒を担いでいるとのやましさは感じないものなのか?
 イチローとか松井とか野茂とか、あちらで大変な稼ぎをもらった連中が、私には悪魔の道連れとしか思えない。

 ジョン・パーキンス氏へのインタビューが以下でみられる。
http://www.youtube.com/watch?v=tcgzrhPIs0g
http://www.youtube.com/watch?v=zUFWhnvOgJc




posted by 心に青雲 at 00:32| 東京 ☁| Comment(1) | エッセイ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
ついにドルが自由に印刷できなくなる日がきました。Frbが追加緩和を辞めましたね。そして今は日銀が印刷しています。しかし、これは、良い知らせなのでしょうか?
もしかして、日本が完全に乗っ取られて、日本が搾取するれんちゅうに寄生されたのでしょうか?
兎にも角にも、ドルには、すでに無限の債権を押し付ける能力はなくなりました。
犠牲は本当に大きかったです。
奢れる平家、ひさしからずですね。
Posted by 神戸だいすき at 2014年11月18日 19:34
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