2015年09月12日

日本の小麦はなぜまずい?


 これは2011年5月に書いたグログ記事の再録である。
 昨日のブログで食料自給率のウソに触れたので、より詳しく書いた記事を載せることにした。

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 昨今またぞろ小麦の価格が上昇して、パンや菓子、うどんやラーメンの値上げが迫っているとか。つい2007〜08年にかけて輸入小麦の価格高騰によって食料品の値上げに見舞われたものだった。
 なぜそんなことになるのかは、本稿後半で書いているが、「食料自給」が叫ばれるわりには国産小麦粉はあまり流通していないようである。

 なぜかというと品質が悪いからだとのことである。
 たいていの国産小麦粉は質が悪く、パスタにもならないので、業者は「外国産の半値でも買わない」そうだ。

 生協では国産小麦粉100%のスパゲッティを販売している。一度買ってみたことがあるが、これはコシがなくて旨くない。タダでもお断りのシロモノであった。「国産小麦100%」などとパッケージに示されていると、ついうかうかとポストハーべストの問題でも安心だろうし、なにより自給率アップに貢献できるかも…などと考えて買ってしまいかねないが、大間違いである。
 パスタはデュラム・セモリナ小麦でないと、おいしくない。

 ただし、私は「季穂 地粉」という国産の全粒小麦粉で丸元淑生氏が推奨していたチャパティ(タネを入れないパン)を作る。「季穂 地粉」は「もやし研究会」(http://moyashiken.com/)で扱っている。
 「季穂 地粉」は非常に高品質の全粒粉である。たぶんちゃんと栽培すれば、日本でも質の良い小麦はとれるのだろうが…。

 浅川芳裕著『日本は世界5位の農業大国』(講談社+α新書)にはこんな解説がある。
 「自給率の低い小麦や大豆を作付けすると、農家は転作奨励金という補助金が支給される。小麦や大豆を作るだけで収入が得られるため、単収(単位面積当たりの収穫量)や品質の向上に真剣に取り組まない農家が増加している。」


 農家に「転作奨励金という補助金」を支給するシステムにしたのは、農水省官僚と自民・公明の政権であり、民主党政権時代でもであった。
 こういうシステムを作れば、人民は自努力をしなくなり、依存体質が骨がらみに身に付いてしまう。だからますます行政に頼る。
 行政は依存されるからいよいよ仕事が出来、我が世の春を謳歌できる。

 「小麦や大豆を作付けすると」とか「小麦や大豆を作るだけで」とあるように、別に収穫しなくても良い、という意味である、これは。
 タネを畑に蒔いて(作付けして)、栽培すると見せかけただけで補助金がもらえるとなれば誰がまじめに働こうとするか。害獣、害虫に食わせるばかり、か。

 われわれの納めた税金は、かくのごとく無駄遣いされる。役人と怠け者にされた(なった)農民の不労所得になっていく。これでなんで消費税を上げるのか。
 これだから小麦粉を扱う業者は「国産小麦なんか外国産の半値でも買わない」と突き放すことになる。

 冒頭に述べたように、今また輸入小麦の高騰によってパン、うどん、ラーメンなどの小麦を使った食料品の値上げ、品薄でダメージを被りつつある。
 マスゴミは品薄の理由として、「国際的な穀物価格高騰が原因」とした。別にマスゴミは自分たちで取材、調査して記事にしたのではない。農水省の官僚に言われるままに報道しているだけだ。それに農水省の御用学者どもに発言させる。いつものことである。

 浅川芳裕氏は、「2000年から2008年までの国際小麦価格と日本における外国産小麦価格を比較すると、日本の価格は国際価格より2、3倍も割高だ。つまり日本では一貫して『国際的な穀物価格高騰』とは別次元の高価格が維持されていることになる」と説く。
 つまりマスゴミの流す情報は大ウソなのだ。

 そして農水省の悪辣なところは、「国際的な穀物価格高騰」とセットで、「だからこういう事態に備えて食料自給率を向上させることが大切」とするインチキ・キャンペーンを打つことにある。

 浅川芳裕氏の『日本は世界5位の農業大国』は、小気味良い筆致で真相を暴露している。つまりは国策、というより農水省の陰謀で小麦価格が吊り上げられているのであって、世界中で小麦生産量が減ったからではないのである。農水省の陰謀とは何か。
 少し長くなるが、引用する。
 
     *    *    *

 答えはシンプルだ。農水省が自ら小麦価格を高騰、維持させているのである。
 建て前上、民間企業は小麦を自由に輸入することができる。しかし農水省の政策に沿って、国は小麦に対して250パーセント(1キロ当たり55円)という関税を課している。

 これは、海外から1トン3万円の小麦を買う場合、税関にその2.5倍の7万5000円を支払わなければならないという法外な税率だ。3万円の原料が10万5000円になる。これでは正味の国際価格で原料を調達し、食品を製造する海外メーカーに太刀打ちできるはずがない。

 そこで農水省は、「少しは安くするよ」とばかりに、高関税に比べ低価格を提示できる強権的な仕組みを持っている。それが国家貿易だ。

 政府はユーザー企業から必要量をヒアリング、商社に国際価格で買いつけさせた小麦をすべて買い取り、無関税で輸入する。その価格に1トン当たり1万7000円の国家マージンを乗せて、製粉業者などのユーザー企業に政府売り渡し価格で卸す。

 つまり、国家が小麦の貿易と国内価格を一元的にコントロールできる仕組みになっているのであり、完全な価格統制としかいいようがない。7万5000円と1万7000円、どちら余計に支払うか二者択一を迫られれば、誰しもが後者を選ぶしかないだろう。

 では、なぜ農水省は企業や国民の負担を増やしてまで、小麦貿易に強制介入する必要があるのか。こちらの答えも単純だ。それは財源と天下り先を確保するためである。

 年間の小麦輸入量は約570万トン。それに1トン当たりの国家マージン1万7000円を掛ければ、約969億円になる。さらには、企業に「契約生産奨励金」という拠出金を1トン当たり1530円上納させている。これは約87億円にもなる。これを前金で支払わなければ、国は小麦を売ってくれない。締めて約1056億円が農水省の財源になるのだ。

 これは、農水省の一般会計予算とは別に計上される特別会計である。農水省のなかでも、これだけの特別会計を持てる部署は、国家貿易を独占する総合食料局食糧部食糧貿易課くらいしかない。だから、「小麦の国家貿易担当は省内ではエリート、有望な天下りコース」と公然と囁かれる。
 そして、主な天下り団体は、特別会計の61億を握る「全国米麦改良協会」と、同85億円の「製粉振興会」の2つだ。
 

     *    *    *

 かつての民主党「事業仕分け」作業でも、これらは検討対象としてカスリもしなかったであろう。民主党もこのカラクリを知らないわけではあるまい。グルなのである。
 テレビのニュースは、末端のラーメン屋やパン屋などがインタビューに答えて「オーストラリアで干魃が…」とか「カナダで小麦が不作らしくて…」とぼやき、「なんとか値上げせずに頑張っていますが、これ以上輸入価格が上昇したら、お客さんに負担してもらわないと…」なんて言っているが、みんな農水省に騙されているのである。

 農水省は国民を騙してテメエたちの特別会計というお手盛りにむしゃぶりついている。その既得権を手放すまいとて、TPPに絶対反対なのである。関税がゼロにでもなったら、国家貿易という仕掛けで国民や業者からふんだくるカネがなくなってしまう。

 さらに冒頭で書いたように、農水省は農家に転作奨励金という補助金(税金)を支給して、国産小麦を保護しているかにみせかけて、まずい小麦を作らせのは、小麦はなんとしてでも輸入ものでまかなう事にしたいからだ。輸入すればするほど、農水省の懐にカネが入る仕掛け、これを手放すはずがない。
 これを陋劣陰険と呼ばずして何とする。

 もしTPPが実現したら、小麦がもっと安く手に入るようになるし、国産小麦も競争のために上質のものを栽培するようになるだろうということだ。ラーメン1杯は今、500円だとすると、100円くらいで食べられるようになる! 
 ふざけた貿易上納金を廃止するだけでも、パンもうどんももっと安価に食べられるのだ。それを阻むのが農水省の木っ端役人どもなのである。
 
 浅川芳裕氏は『日本は世界5位の農業大国』で農水省の大ウソ(小麦生産国で減産になっている)を次々と打ち破ってくれる。以下に挙げてみよう。
 
 中国とインドが経済発展と人口増で小麦輸入が増えていると言うが、昨日今日激増したのではない。順調に輸入量が伸びているのであり、2008年や今年、突発的に起きたのではない。小麦が足りないのは中国やインドのせいではない。
 
 バイオ燃料の需要拡大もよくニュースで語られるが、これもウソ。どれだけ小麦生産量を押し上げたかといえば…。
 「世界のバイオ燃料作物生産の7割を占める米国とブラジルの小麦生産量は、それぞれ6800万トンと580万トン。米国は減るどころか新興国の需要に対応して増産している。
 ブラジルは気候的に小麦作に適していないため、従来から小麦の生産が減っているわけではまったくない。」
 とのことだ。

 オーストラリアで旱魃があったことは事実だが、あの国は旱魃が起きても起きなくてもどうでもいいという農法なのである。灌漑すれば旱魃は避けられ、収穫量も上がるのに、灌漑インフラ整備にカネがかかりすぎ、コストが上がってしまって国際競争力を失ってしまう。だからオーストラリアは旱魃のリスクは織り込んで、自然の雨水に頼るだけの農法を採用している。そのほうが「長期的に収益性が確保できるという農業経営を、自ら選択しているだけ」なのだ。
 それにオーストラリアは日本企業が発注した小麦の数量を100%守っているので、旱魃が理由で減産したわけではない。

 しかもオーストラリア産の小麦で日本に輸出するものは、日本人好みのうどんやラーメンの需要と嗜好に応える品種にしてある。独自に開発したものだ。だから日本人がうどんやラーメンを食べないと余ってしまう。売り先がほかにない。

 ロシアもアルゼンチンも、自国の食糧が優先すると日本に売ってくれなくなると心配するのもウソである。農水省はロシアからもアルゼンチンからも一度も輸入したことがない。ロシア産小麦は、日本人が求める品質に到達していないのだそうだ。

 日本が長期にわたって輸入してきたのはアメリカ、カナダ、オーストラリアの主要3国である。小麦は世界的に少しも減産していないから心配ない。ただ農水省がウソの情報をマスゴミに流して、価格を操作しているから日本で品薄になる。

 というように浅川氏は次々に農水省のウソを論破していく。
 農水省は小麦の輸入を独占して、国際価格の2〜3倍で家計を苦しめている。
 それでも平然と犯罪行為を続けるのは、「食料安保」「食料自給率向上」を旗印に、官が管理・統制しないと国民が飢えるからと言って、自分たちの存在と仕事を必然と見せかけるためである。




posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☀| Comment(2) | エッセイ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
今の日本で美味しくてリーズナブルな小麦を提供できる会社をつくればビッグビジネスに成長するかもしれない…と真面目に考えてしまったのですが考えが単純過ぎますかね?
Posted by 金剛 at 2015年09月13日 04:55
金剛様

小麦に限らず、農業はビッグビジネスとして考えるべきではないと思います。農業はビジネスとか、効率とかではない、大事な要素があります。
例えば安全保障であるとか、治山治水であるとか。
Posted by 金剛様へ(ブログ筆者です) at 2015年09月13日 16:46
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