2015年12月02日

「お国のために」とは


 先の大戦で、多くの将兵は天皇のために、お国のためにと言って戦って死んでいった。その思いをヒロヒトはいささかも受けとめず、責任を陸軍首脳に転嫁して生き恥をさらした。なんだかんだと屁理屈つけて天皇の椅子にしがみついた。
 これは嘘偽りのない客観的事実である。天皇教信者は否定するだろうが…。

 しかし一転して、靖国に眠る英霊の主観はどうかと考えてみるに、それで天皇や国を恨んでいるだろうか。
 現在の左翼護憲派にはわからないだろうが、もし霊なるものに聴けたら、彼ら英霊は国のために戦って本望だったと答えるに違いない。現代の諸君の感覚で自分たちの行動を見るな、と言うだろう。
 ヒロヒトの裏切りさえ、英霊は許しているだろうし、恨んでなどいないだろう。

 「きけわだつみの声」に収録されている戦没学生の手記を見ると、彼らはそうとう個人主義で、戦争に対して冷めた見方をしていて、もしかしたら天皇や国を恨んで死んでいったかと思われる。あの本はサヨクが創ったからだ。それはあるだろうが、ここでは違う角度からあえて問うてみたい。
 戦後は「きけわだつみの声」にあるような、戦争に行きたくなかった、犠牲になった、軍部が悪い、国が悪いとするサヨクの思想だけが正しいとされてきた。

 また一方で、とりわけ特攻で散った人たちを「犬死に」と誹る向きがある。兵隊に取られた人は騙されただけ、ひどい目にあわされただけとする意見があるのは私も承知しているが、それはあまりに疑似客観主義と言うべきではあるまいか。

 ヒロヒトは戦争責任から逃げまくった。俺は軍部に騙されたのだとか、どうしようもなかったのだと言いつづけた。周辺もそれに同調して、天皇を擁護した。事実を隠蔽した。
 あまつさえ、1975年10月31日、昭和天皇は日米記者クラブで、初の公式記者会見をし、記者が「戦争責任についてどのようにお考えですか」という質問に対し、「そういう言葉のアヤについては、私はそういう文学方面はあまり研究もしていないのでよくわかりませんから、そういう問題についてはお答えが出来かねます」
 と答えている。

 これは事実としては、戦争中に天皇が中心となって大本営を指揮し、戦争を遂行していたことを、戦後なかったことにして、それが成功したからこそ、このヒロヒトの答えがみんな承服してしまった背景となっているのだ。

 ただ戦争責任とは何かという根源的な問いはある。日本がナチスのようにスターリンのように、そしてルーズベルトやチャーチルのように、戦争を引き起こした張本人かと言えば、かなり違うし、戦勝連合国が言うような「戦犯」とも言えない。
 いかに巻き込まれた戦争であったにしても、宣戦布告して戦争に突入したのだし、ほとんど負けると決まっていたような戦争をやった、多くの犠牲を出したのだから、責任なしとはとうてい言えまい。

 しかし、ヒロヒトは連合軍とりわけマッカーサーの都合で、退位もせずに生きながらえた。戦争を始める前からある程度、戦後の処遇は決まっていたのだろう。
 一例を挙げれば、戦争中、日本軍が占領した地域から、ヤクザを使って金銀財宝を略奪したと、高橋五郎氏や鬼塚英昭氏は証言する。

 その金などを、戦後、天皇とGHQとで山分けしたのだ。そういうことやらかすために、アメリカは戦争を仕掛け、日本は戦争に引きずり込まれた。だから巷間言われるような意味で私は天皇に責任があるのないのと言っているのではない。

 さて、私が今回またしても天皇の問題を出しているのはややテーマが違う。
 冒頭に申したように、英霊は天皇のため、国を護るためと言って、戦争で亡くなっていった。その思いにヒロヒトはいささかも応えなかったというのは客観的には事実だと言っている。むろんヒロヒトは毎年8月15日の戦没者慰霊式典には参列して、上辺はコウベを垂れてはいた。その一方で、連合諸国とどういう約束を交わしたのか、靖国には参拝しなくなった。

 だが、ここで英霊の主観はいかにと問うならば、天皇や国家が一個人(英霊)の心に応えるほうがいいかもしれないけれど、それがなくても、戦った人たちは何も見返りがないとて、不満は言うまい。
それが戦前というものだったと思う。

 だから靖国神社がある。全国に護国神社もある。せめてあれで英霊の心に応えようとしている。後世のわれわれが、英霊に感謝の気持ちを持ち、国のために命まで捧げてくださったことに深甚な意味を見出すことこそ、かれら英霊の心に応えることではないのか。

 私のわが空手組織への思いとはそれに似ている。一部の人から、空手組織があなたの熱い思いに応えてくれたのか、と質問されたことがある。
 しかし組織が私という個人を大切にしてくれるかどうかなんて、考慮の外である。組織に対して己れの足らざるを恥じるのみである。英霊もきっと己れが足らざるをもって戦に負けたことを恥じておられることと思う。しかしむろん戦争は勝つか負けるかだ、誰も英霊を責めることなどできない。

 私に、実情を知りもしないで、組織はあなたが尽くしたことに見返りがあったのかと問うこと自体がおかしいが、そういう問いかけをする人は、組織とか恩師とかに、「教えてほしい」ではなく、「自分の感情を納得させてくれ」なっているからである。

 私が空手組織で尽くしたことなど、ほとんど価値はないが、よしんばいくらかあったとしても、それで給与をもらったわけでもないし、何をするにも持ち出しだった。それで何の不満もあるわけがあい。
 強いて言うなら、南ク継正先生がご著書を出されるとか、論文を発表されるとかが、私にとっては見返りというか、「応え」であったし、これからもそうであろう。
 
 むろん南ク継正先生が私のために著作を書いておられるなどと自惚れているのではない。南ク先生は社会に問うためとか組織のために書かれているのであるのは当たり前だ。
 「私たち」のためにご講義をして下さり、本を著してくださる。これ以上の「応え」がなお必要か?

 そうした師事の仕方をやったことがない人には、何を言っても理解は無理である。

 現代の人の多くは、先の戦争でも兵隊に行ったひとに国家や天皇が何か見返りを与えるとか、国への熱い思いに応えるとかするに違いないとしか考えないのではなかろうか。
 サラリーマンやOLが今期がんばったからボーナスをもらうかのような感覚で、個人と国家を考えているようである。

 これは本ブログで言ってきたように、受験勉強で創られた思考回路になっているせいではないか。受験は一つの決まった模範解答だけを選ばせるシステムで、それを暗記し、適応する脳の働きにしたやつだけが「成功者」になる。
 先に西尾幹二氏が「人と人の間にいろんな複合的な違いを際立たせる尺度があって、それが宿命として意識されているほうが個人は幸せだし、社会は安定する」と説いていることを紹介したが、こういう考え自体をもう理解できないアタマに、秀才ほど毒される。

 わが国は戦争に負け、底の底から立ち直ってきた。人心はともかく、日本の工業力やサービス産業などでは世界に先駆けるレベルになった。それを支えてきたのは、ザッと言って企業戦士と言われた者であったとしよう。
 では彼らは会社や国家から何か見返りはもらったのか?

 むろん給与、ボーナス、役職などで見返りはあったろうが、それ以外は何もない。人並みの待遇であっただけだ。アメリカの超富豪、たとえばビル・ゲイツみたいな、社会からの応えは預からなかった。勲章をもらったわけでもなかろう。
 それを不満に思う人は極めて少なく、言葉にも出さないが、みんな日本の復興になんらかの形で寄与できたことの幸せを噛みしめるのみであった。

 だから青色ダイオードを発明したから、その手柄はオレ1人にあるとわめいた中村修二を、日本人は変な思いで見たのである。中村修二は日本人のマインドではなかった。

 本来ならヒロヒトは逃げずに、命を捧げて国に尽くした人たちが無言でなんの見返りを求めないこと、そのものに応えるべきであったのだ。靖国神社はそういう己れを声高に言い募ることのない、日本人らしい英霊との交流が静かに行なわれる場なのではないか。
 なのにヒロヒトも、今上天皇も参拝しない。

 今上天皇と皇后は、長男夫婦のわがままな振る舞いを咎めることもしないテイタラクだ。国民がみんな眉をひそめているというのに、とぼけ続けていいわけがなかろう。

 本来的には、英霊は「天皇が居てくださるだけで良い」としながら言うなれば天にましますのだ。その魂の有りようが日本ではないか。それは主観でしかないと、サヨクどもは言うであろう。個人の人権や自由という価値が踏みにじられたじゃないかと。だが、そうした主張や断罪の根拠自体が、純粋な客観であるとは限らないのである。





posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☀| Comment(2) | エッセイ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
下記↓強く。。仰る通りと思います。

>逃げずに、命を捧げて国に尽くした人たちが無言>でなんの見返りを求めないこと、そのものに応え>るべきであったのだ

全ての日本国民に防人と武士道の精神を強要しておき乍ら頭領が金塗れなんて。。只の日本民族虐殺?殲滅?ホロコースト?だったのでしょうか?

戦前戦中戦後日本国民の耐え難き苦難を想う時、親達の世代が本当に不憫でなりません。。!

Posted by シンクレア at 2015年12月02日 22:50
シンクレア様

コメントありがとうございます。
そうですねえ、私は不憫というよりは感謝ですが。
Posted by シンクレア様へ(ブログ筆者です) at 2015年12月03日 15:19
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス: [必須入力]

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。