2016年01月06日

プロ野球の新監督を評す


 YouTubeで見つけた野村克也氏へのインタビューを見た。「ザ・インタビュー野村克也編」。
 https://www.youtube.com/watch?v=xpQVYnocCPY

 野村氏は高卒で南海にテスト生で入団して、苦労してブルペンキャッチャーから1軍のレギュラーを勝ち取り、やがて三冠王になって超一流選手の仲間入りをし、現役引退後は4球団の監督をやってこれも最下位のチームをみんな引き上げ、名監督の名をほしいままにした。
 そういう輝かしい人生の裏で、努力の人として歩んで来たのは誰しも知るところであろう。

 私は彼の生きざまを見事と評価するが、顔つきがよろしくない。なんだかタマネギの芯を噛んだような、不機嫌で、仏頂面をしているのが、将たるにはふさわしくない。彼の代名詞みたいな「ぼやき」も、自分から品格を落としている。

 彼は母親の手で極貧のなか育ててもらい、なんとか親に楽をさせたいと思って、大金が稼げるプロ野球に入ろうとした。
 ところが採用された南海ホークスでは、ただ投手の球を受けるだけで、指導もしてもらえず、練習もさせてもらえない。あげくに1年でクビだと言われた。そこから彼はねばって、努力して這い上がり、野球選手として成功して行く。

 どん底から這い上がる、苦労をする、勉強する、それを当たり前のようにやり続けたからこそ、彼は生き抜いた。初めからスター扱いされた選手とは全然違うのだ。

 今年、秋にはプロ野球でも何球団かが監督交代があった。人気球団の巨人も原辰徳が退いて、スター選手だった高橋由伸が来季から監督を務めることになった。阪神は金本知憲が新監督だという。

 野村がインタビューのなかで原監督を評していた言葉が面白かった。
 原は巨人の監督だから、いつもマスゴミにインタビューを受けていたけれど、それを聴いていて、「さすがだな、とか、良いこと言うなという談話が出て来ない」と指摘していた。

 「若いうちの苦労は買ってでもしろと言うが、原には苦労がなかったから野球に味がない。今の巨人は天才野球で、野球をただ打って走って投げるだけ。来た球を打つだけ。何も考えてない。苦しんでいるなということが伝わってこない。巨人だけでなく今のプロ野球全体に言えることだ」
 と語っていた。

 さすが味のある言葉を語る。こういうことが確かに原監督にはまったくなかった。巨人がジリ貧になるわけだ。
 原はたしか退任会見で「チームとは個人でなく巨人だ」みたいなダジャレを言っているのを読んで、アホかと思った。暴力団に不倫を脅されて1億円も払ったアホだけのことはある。何も考えてない。

 だから巨人は戦力が整ったときは優勝できても、選手の力が落ちて来ると勝てなくなったのだ。数年前は絶頂期だったが、それが今年も続くだろう、いや今年はちょっと落ちても来年は大丈夫だろうと安心してしまう。胡座をかく。そうやって組織がダメになるのだなと、教訓になった。日産やソニー、東芝が落ち目になったのはそれであろう。 

 巨人の高橋由伸もずっとスター街道を歩いてきたから、今のところは監督の資質としては疑問符が付く。球団としては華のある監督にしたいのだろうが、それでは勝てないからやっぱり外から外人だのFAだので出来上がった選手をカネでかき集める愚策に走るのだろうか。4〜5年、監督として失敗するのを長い眼で見てやれれば成功するかもしれないが、野村のような名監督にはなるのはむずかしかろう。

 今年のヤクルト・スワローズが優勝したのは、前任の小川、今年の真中と続いた監督が、野村の教え子だったからだろう。数年かけてじっくり選手を育てたからだ。
 阪神はどうだろう。金本は在日だし、選手時代にわがままをやった人間だから、現役選手が言うことを聞くのだろうか。金本も最初は失敗するだろうが、それを関西のファンは待ってやれないで、罵倒するから、結局ダメだろう。

 野村氏が言っていた。外野手だった人で名監督になったケースはない、と。外野手は打撃ばかり期待されるし、守備は大雑把で良い、あまり野球でどうしたらいいかを考えない。だから監督にはむいてないのだ、と。高橋も金本も、DeNAのラミレスも、新監督はみんな外野手出身だから、そこそこにしかなれまい。

 今年も秋に、プロ野球のドラフト会議があって、夢のプロ野球に入って一流選手になろうとする若者が大勢厳しい世界に入って来る。
 テレビに映ったり新聞に出たり、うまくすれば億のカネがもらえ、美人妻と結婚でき、地元ではチヤホヤされる。
 だけど、本当にいいのか?

 これは野球選手だけに限らない。ごく普通のサラリーマンやOLでも同じことで、昨今では誰もが大学に行く。落ちこぼれたものが劣等感を抱きながら専門学校に行く。いうなれば狭き門のプロ野球を目指すのとあまり変わらない。

 高校の先生や親から言われるがままに大学に行き、首尾よく一流の大企業に勤めていても定年までの生活は保障されない。それが明らかになった好例が今年の悲惨な東芝の崩壊であった。
 一流大学なら大丈夫、大企業なら大丈夫、ステイタスもあり、カネももらえ、良い条件で結婚もできる、と考えても悪くはないけれど、それに安住していると、人生どこで破綻するかわかったものではない。

 自分だけは挫折しないとか、自分が行く業界だけは安泰だとか、自分の恋愛はきっと幸せな生活が待っているとか、会社はきっと自分を出世させてくれて定年まで面倒を見てくれるとか、そういう期待だけ、夢だけで自分の進路をなんとなく定めてしまう。
 そんな甘い考えで大学に行っても時間と学費の無駄になる。

 親や学校の教師は、まあたいていは子供に親切にしてくれ、思ってもくれ、イジメからも守ってくれるだろうが、社会に出たらそうはいかない。会社に入っても上司や同僚に恵まれなかったら、悲惨な人生になる。そうなるほうが普通だと覚悟しておいたほうがいい。
 それが普通だから、ある意味、転職雑誌や転職サイトが大繁盛なのだ。あるいは鬱病が蔓延するのだ。

 クルマの運転でも、住宅街を幹線道路なみに60キロでフッ飛ばしていくクルマがあるけれど、住宅街では子供や自転車が角から飛び出して来るもの、と思って運転しなければならない。俺の運転ならそんなことは起きないとか、飛び出すほうが轢かれて当然、という思いで運転するバカがいる。
 こういう運転がやれてしまう人間は、人生にも舐めてかかっているのだ。

 友人の子供が大学受験に失敗して、家に引きこもり、プータローをやっていると嘆いていた。これも自分の人生を甘く考えていたからである。何も大学に行かなくたって、これからの時代に合う職業を選べばいいのではないかと言ってみたが、親は聞く耳を持っていなかった。なんとか大学に行ってほしい、せめて専門学校に…としか考えない。

 野村克也のように、しょっぱなに挫折したからこそ努力の人になれたのだから、大学受験に失敗したことは寧ろチャンスだと考えればいい。
 巨人でいえば、長嶋茂雄や原辰徳はスターを約束された人だったから、それなりの苦労はしただろうけれど、「努力の人」にはなり損なったのだ。







posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☀| Comment(4) | エッセイ | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
都築詠一様
略啓
小針哲郎です。ご著書『心に青雲 藝術論集』届きました。送料までご負担の上お送りいただいたことに深く感謝申し上げます。はじめの数篇を読ませていただいただけでも都築様の志の高さと洞察の深さに膝を打つばかりです。熟読玩味し学ばせていただきます。都築様のご健康とご健筆を心よりお祈りいたします。  忍々
Posted by 小針哲郎 at 2016年01月06日 08:32
野村克也氏の人物月旦興味深く読ませて頂きました。

「心に青雲」では、特に複眼的思考に学ばされています。

男が成長するにあたってどんな配偶者をえらんだかは、決定的とも言うべき影響を被ります。

野村氏の顔が宜しくないのは、何かと悪い噂の絶えぬ野村沙知代との関係によるものと私は判断しています。

やはり戦後の富士屋ホテルの一件が、彼ら自身に深い影を落としているのでしょう。

まさに人生に言い訳なしの真実の重みに、野村氏の顔は、その重みに耐えてつつ、また耐えかねている顔だと私は考えています。

Posted by 清野 眞一 at 2016年01月06日 13:08
清野眞一様

わかりませんけれど…、野村氏や落合氏が野球では実力がありながら、どこか日陰の身というのは何か出自のことがあるのではないでしょうかね。
長嶋や王といった、読売がつくった華のあるスターではなく、どこか暗さが野村や落合にはありますね。
あるいは、社会への不貞腐れた感じというか…。

野村、落合、金田らのハングリー精神は半端ではないですものねえ。どん底から這い上がるバイタリティのデドコロは何でしょうね。
たしか野村が南海の監督兼選手をやっているとき突然クビにされたのは、出自のことが問題にされたからだと、当時の週刊誌が書いていた記憶があります。


Posted by 清野眞一 様へ(ブログ筆者です) at 2016年01月07日 07:52
「心に青雲」様からコメントを頂いていたのですが気づくのが大変遅れ申し訳ありませんでした。

やはり野村氏の出自に問題があるのですか。全く知りませんでした。

南海ホークスを首になりかけたのは、野村現夫人が原因との通説があったから私は書いたのですが、考え直したいと思います。

この現夫人は、細木数子氏とも知り合いだと言う事なので、「朱に交われば赤くなる」の弁証法だと考えていたのです。

ご教授有り難うございました。
Posted by 清野 眞一 at 2016年01月12日 13:35
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