2016年06月09日

拒食症・過食症の原因を探る(1/3)


《1》
 某日、ご隠居と与太郎が近所の喫茶店でコーヒーを飲んでいる。店内にはカーペンターズの「トップオブザワールド」が流れている。

与太郎:この歌手カレン・カーペンターさんは美声でしたね。
ご隠居:そうだな、うまれついて歌手になるべき女性だったという感じだね。
与太郎:32歳で若死にしたのは本当に残念でした。
ご隠居:拒食症だとか。

与太郎:あっしは食うだけが生き甲斐なんで、どうして食べたくなくなるんだか分かりません。しかも食べなければ死んじゃうとわかっているときになっても、食事を拒むって…。
ご隠居:それが認識の恐さだな。認識は希望の星にも悪魔の囁きにもなるんだ。
与太郎:へ? にんしき? 拒食症は低血糖症から起きるって、テレビで解説しているのを見ましたよ。原因はまあさまざまだけど、ダイエットのやりすぎとか、ストレスや家庭環境、成長期の不安などの心の病気だとされているとも言っていました。

ご隠居:低血糖症説は論外だね。もしそうなら、糖を点滴してやれば死に到ることはなかろうに。心の病気というのが一応正解だが、ストレス、家庭環境、不安では一般的すぎる。その中身を言わないと。
与太郎:思春期が圧倒的に多く、それも女性に顕著なんだとか? 若い女の子は「やせ願望」がありますからね、それが嵩じるのかな。

ご隠居:それはそのとおりだが、「やせ願望」程度なら、死に直面してもなお食べない(食べられない)のでは、願望レベルでは説明がつかない。生きる本能さえ失わせるほどの認識の威力とはなんだと。
 たしかに世間が女のデブは不格好だと言うから、それが「もっとやせたい、太りたくない」という思いを抱かせ、過度のダイエットに走る傾向が強くなる「素地」ではあるが、この本質は認識の暴走なのだ。嵩じるというより、暴走というのがふさわしい症状になる。
与太郎:あっしにゃ暴走って言われても分かりませんよ、ご隠居。

ご隠居:じゃあ聞くが、患者の大半が10〜20代の女性なんだが、この時期は「やせたい」願望だけなのか? この年代の特徴はなんだ?
与太郎:そりゃまあ、恋多き年頃ってやつですかね。思春期ですからね。
ご隠居。そう、その思春期がキーワードなんだよ。多くの医者や心理研究家は、南ク継正先生が措定した「思春期の実体と認識の構造」がわかっていない。不勉強の誹りは免れない。
与太郎:じらさないで教えてくださいよ。

ご隠居:では少し説いてやろう。
 過食症、拒食症になるのは、思春期・青春期の若い女性に多く見られる。
 恋人の男性、あるいは片想いの男性、尊敬する男性教師や、音楽やスポーツの男性コーチから、太っていると笑われた場合に、「大変だ、嫌われる」という恐怖に陥りやすい。

 「太っている」と面と向かって言われたのでなくても、彼の目つきや言葉のはしっこで、「なにか私の体型をじろじろ見ている気がする。あの冗談は私のことをバカにしているのかも。もしかして私をデブだと思っているのかしら?」という根拠にない疑問であっても、「自分は太り過ぎだ」との思いが強烈に膨らむ。
 これが拒食症になりえる。

 とりわけ思春期は脳細胞が急激に発達し、男は男に、女は女になる時期で、南郷先生は「大人になりにいく」という絶妙の表現をされた。これは爆発レベルで脳が変化している最中なので、「思い」は強烈に膨らみ、バケモノのように自分の思考を占領してしまう。暴走するのだ。

 せんだって、東京品川区の荏原町駅で、中学2年生の女の子二人が心中のようにして鉄道自殺した事件があったろう。あれも大人ならたいした悩みには思えなくても、思春期だから悩みの像が膨らんで暴走するんだよ。突然、脳細胞が急激な成長を起こす。

 だから、1時間前まで来週の演劇の発表を喜んでいたはずが、突然演劇が大嫌いになって、死にたいと言う感情が膨らむ。あの事件の場合は、おそらく二人ともその思春期の暴走が一緒に来たのだろう。

 過食症の場合も同じで、好意を寄せている人に「君はやせすぎだね」と言われたか、そう思われていると勝手に思い込むかして、「食べなければ大変だ」となる。
 治すのは、一番はその好意を寄せている男性に「君は太っていない」とか「痩せ過ぎじゃない」と言ってもらうことなのだよ。「あるいはスタイルがいいね」とか。拒食の子にいくら食べろと言ってもダメ。

与太郎:カーペンターズは兄妹で活動していましたが、wikipedia を見ると、カレンは自分の体型については太りすぎという固定観念を持っていた。ある日、カレンは兄リチャードに「ねえ、お兄ちゃん。私って太ってる?」と聞いたという。するとリチャードは「あぁ、ちょっとな」とさり気なく答えた。事実、その頃のカレンは平均的な女性と比較してぽっちゃりしていた。その兄の言葉を受けたカレンは、「絶対に痩せてやる!!」と発奮。ダイエットに励むようになったが、それが彼女の寿命を縮める結果となってしまった。とあるんですね。

ご隠居:それだけだと、断定はできないが、カレンは兄を恋人のように慕っていたんだろう。ただの兄貴じゃなかったんだよ。
与太郎:今流れている「トップオブザワールド」は、女性が恋人と出合った歓喜を歌っていますが、カレンにしてみれば兄のことだったのかもしれませんね。
ご隠居:うん、カレンの歌いっぷりは、アメリカ人にしてはとても感情がこもっているよね。同じステージに立って演奏している兄が身近にいる幸福感があったとしてもおかしくはないね。

 与太郎:それって、ご隠居が良く言う「認識は感情で創られる」でしょう? 自分がやせているとか、太っているとかの認識が、好きな人に嫌われたらどうしよう、という感情で強烈に創られるからこそ、変われないんですね?
ご隠居:おお、そのとおりだ。わかってくれて嬉しいね。
与太郎:じゃあ、全部その男に思われたいという切なる感情なんですね。

ご隠居:いやそれはな、異性のからみでない場合もあり得るよ。先に言ったように、女性はふだんからスタイルを過剰に気にする。それがちょうど思春期に目覚めて、スタイルを超超過剰に気にするように脳が暴走することも考えられるな。




posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☁| Comment(0) | エッセイ | 更新情報をチェックする
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