2016年07月09日

出汁の取り方実践篇


 6月20・21日付本ブログで出汁のことを書いた。
 それに続けて、今回はもう少し実践編を書いておきたい。
 私は大学生のころから食事を作った。料理本片手に台所に立った。自学自習。
 むろん、当初は出汁の取り方は本に書いてあっても、顆粒人工出汁でいいと思っていたが、後に作家・丸元淑生の料理本と出あって蒙を啓かれた。
 出汁はちゃんととらないといけないと。

 丸元淑生は、出汁と言うより「スープ」か「ストック」を使う。以下もそれに倣っている。

 日本では出汁というと、昆布、鰹節、干し椎茸、煮干し、干し貝柱といったところが頭に浮かぶけれど、そもそも野菜や魚を煮て出てきた汁はいわば自然の出汁、スープなのである。世界のほとんどの民族は、それを出汁にしている。日本では独自に、野菜や魚から特別に旨みをとるための技術を発明発展してきた。

 単純に野菜や魚から出る汁(ストック)を利用するのではなく、発酵させたりカビをつけたり乾燥させたりしている。そのため、より旨みが引き出されたり、化学変化を起こして成分の栄養素が高くなったり、余分な雑味が消えたりする。その知恵こそ和食がひと味ちがった世界に冠たるものにしたのだ。

 この出汁のおかげで、和食は薄塩でも十分おいしい。西洋料理や支那料理は、スープは動物の骨やスジなんかを煮だすか、塩をたんまり入れ、油をたくさん使い、香辛料を叩きこまないと味が整わない。肉は焼いたり煮たりすると栄養が逃げるから、それを補うためにゴテゴテとバターを入れたりミルクを入れたりして濃厚な味付けにしないとまずくなる。

 日本ではどの家庭でも、母親が心を込めてよく出汁をとった食事をつくる。ゆえに西洋や中華より、料理は丁寧かつきめ細かいものになる。愛情がこもり、それが子供に伝わるのである。

 魚料理をつくるときは、野菜と連動させることで、飛躍的に栄養素がとりこめ、おいしくなる。これをシステム化して普及させたのが丸元淑生だった。
 魚は切り身だけ買っていると、肉より高いものにつきがちだが、腑や頭、骨などを無駄なく利用すると家庭料理が充実し、魚も安いものになる。
 魚は1匹まるごと買って、身以外は煮だして出汁をとるべきである。骨や頭の煮だし汁は栄養宝庫なのだから棄てるなどもってのほかだ。エビもむき身ではなく丸ごと買って、頭と殻はストックにする。

 丸元は、そうしたスープを「ハーティ・スープ」と呼んだ。ハーティ(hearty)とは、食事では、実質的な、たっぷりの、栄養のあるという意味になる。
 魚のストックの取り方は簡単で、解体した魚の骨や頭をすぐに湯に入れて、煮だすだけ。鮮度の良い魚ほどアクはあまり出ない。アクは最初は玉杓子ですくい、その後は網杓子で取る。だいたい30分ほど煮てから野菜クズを入れてさらに30分ほど煮ればよい。そのストックをスープや出汁に使う。

 野菜クズは、ネギの青い所や根っこ、固い皮、キャベツの芯、セロリの余ったのなどである。
 野菜と魚でとったストックは抜群の栄養価となる。これは顆粒だしの素では、栄養はほぼゼロ。商店で売っている出来合いの総菜はこんな手間ひまはかけないで、人工出汁ですませるだろうから栄養的に劣るし、癌のリスクは生じるし、味は濃くしなければならなくなる。

 では、出汁の取り方実践編。主に丸元氏の『スープ・ブック』から引用する。
〈しいたけ〉
 干し椎茸を指ではじいてゴミをとる、水洗いはしない。椎茸をジッパーのついたポリ袋にいれて、水を入れ、空気を抜いて閉め、冷蔵庫に6時間から一晩置いておく。水の量は、椎茸8〜9個(50グラム)に対し1リットル。一日以上水につけすぎると苦み成分が出る。

〈昆布〉
 最も良いのは水1カップに対して10グラムの昆布。出汁のとりかたは様々で、丸元は、鍋にいれたらすぐ強火にし、湯がわいてきたら昆布を取り出すという。でも、昆布はしばらく水に着けおきしてから、火にかけて、ゆっくり温めていくと良い旨みが出るとしているところもある。
 また、香りは少々犠牲になってもとことん煮込めばそれだけ栄養が溶け出すから、家庭ではそれで良いとも言われる。

〈昆布と鰹節〉
 伝統的な出汁である。どちらか片方ではいい出汁はとれないが、淡白な昆布だし、濃厚なカツオ出汁のブレンドが最高の美味になる。
 水1カップに対して鰹節10グラム、昆布5グラム(1人前の量)が標準である。
 昆布は自ら煮ていくが、沸騰して昆布を取り出したら、鰹節をドバッと入れ、弱火で5分間加熱する。アクが出たら網杓子で取る。

 このとき鰹節は絶対にぐらぐらと煮立たせてはいけない。
 原則は、昆布は中火、鰹節は弱火である。
 火を止めたら塩を少々入れ、鰹節が溶け出した成分を再吸収しないようにし、それから「だし漉しシート」で漉す。

〈粉鰹節〉
 鰹節の粉は丸元のお勧めである。味噌汁は昆布や煮干しではあまりうまくならない。どうしても鰹節が要る。
 削り節の粉は、鰹節を削り節にするときに出る粉だが、最上級の削り節の、その粉はお買い得である。
 粉になるほど酸化しやすいから、買った粉は冷凍しておき、必要に応じて取り出す。出汁の取り方は、沸騰した湯に差し水してちょっと温度を下げたところへ粉を投入する。弱火で煮立たせず2〜3分してからキッチンペーパーなどで漉せばできあがり。1キロほど買って冷凍しておくと便利だ。

〈野菜のストック〉
 最も標準的なものは、タマネギ、長ネギ、にんにく、にんじん、ジャガイモ、セロリ、パセリ、ローリエだと丸元は紹介している。他の野菜を使ってもいいが、アブラナ科のキャベツ、ブロッコリーは強い匂いを出すのでストックの香味を押さえてしまうから避けろとある。
 こうした野菜類を弱火で約1時間煮込む。3割がた煮汁が減る。クズ野菜を取り除き、漉して出来上がり。冷蔵庫で3日、冷凍でも3カ月は味が守られる。

 最近知ったのは、トウモロコシの芯で、実を食べたあとの芯を適当に切ってから煮だすと、良い出汁がでるそうだ。

〈昆布とイリコ〉
 水2リットルに対して昆布20グラム、イリコ60グラム。
 昆布を水から鍋にれて火をかける。沸騰寸前にイリコを入れる。沸騰したら中火。アクをとる。塩を入れる。イリコを入れて数分でイリコの甘みは九分どおり出る。酒を適量入れて味を整える。

〈煮干し〉
 1匹ずつ頭とはらわたを取り除く。1リットルの水に30分以上は浸けてふやかしておく。その水のまま火にかけ、はじめは強めの中火で5分沸騰させる。沸騰する寸前に弱火にしてコトコト煮る。アクを丁寧にすくいとる。10分ほど煮て、漉せばできあがり。
水に浸ける前にフライパンで煎り付けると香りが出るというが、面倒なことである。上質な煮干し(明後日詳述)なら頭もはらわたもそのまま煮てもいい。
 煮干しは鮮度が落ちるのが早い。黄色く変色してきたら棄てたほうがいい。




posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☀| Comment(0) | エッセイ | 更新情報をチェックする
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