2017年05月08日

ユネスコ世界文化遺産の愚劣


 5月6日、福岡県の古代遺跡「『神宿る島』宗像・沖ノ島と関連遺産群」が、国連教育科学文化機関(ユネスコ)の世界文化遺産に登録するようユネスコの諮問機関、イコモスが勧告したと報じられた。
 日本政府がこの勧告にしたがって登録申請すれば7月開催のユネスコ世界遺産委員会で正式決定される見通しだという。

 産経新聞5月6日付によると、「登録されると、日本国内の世界遺産は文化遺産17件、自然遺産4件の計21件となる。
 宗像・沖ノ島と関連遺産群は4〜9世紀の大陸との交流にまつわる古代遺跡。九州と朝鮮半島の間の玄界灘にあり航海安全と交流成就を祈る国家的祭祀が行われた沖ノ島(宗像大社沖津宮(おきつみや)と本土の宗像大社、祭祀を担う豪族が築いた新原・奴山古墳群など8件の国指定史跡で構成する。)」

 国連(正しくは連合国)にしろユネスコにしろ、実態は国際機関に名を借りた白人支配の貫徹、あるいは有色人種国家への介入が目的である。そして、きれいごとを言って、カネを集めては白人とその子分に成り下がった一部の有色人種の人間を事務員にしてタダ飯を食うためである。
 その真実を、国会も害務省もメディアも隠蔽する。

 国連(連合国)では、ドイツと日本は依然として「敵国条項」の対象になったままだから、さまざまな嫌がらせをされる。ユネスコが先般、「南京大虐殺」なるインチキを世界文化遺産に認めたのもその一環であったろう。
 だから。
 日本の移籍や自然風物を、ユネスコに世界遺産として認めていただこうという働きかけ自体が間違いで、それは奴隷根性そのものである。

 媚中・副島隆彦は、「世界基準に逆らうな」が口癖のようだが、要はグローバリズムに従え、という奴隷根性を推奨しているに過ぎない。だからありもしなかった「南京大虐殺」を肯定して支那に媚びる。主体性ゼロのアホである。
 
 背景には根深い白人崇拝があるようだ。白人こそ、白人文化こそ人類のトップなんだという馬鹿げ切った思い込みがあって、だから国連信仰、ユネスコ崇拝につながる。
 私たちはおガキ様のころから学校教育で、国連は人類の理想だの、ユネスコは世界中の人を幸せにしようと努力している機関だから寄付をしましょうなどと強制されてきた、いささかも疑わないアタマにさせられている。

 その流れで、多くの世界中の人たちはグローバリズムは正しいと思わされている。それに疑問を呈すると、「極右」とレッテルを貼られ、あるいは「保守主義」「ポピュリズム」と罵られる。
 白人支配層としては、大衆にグローバリズムのウソがバレないように、あの手この手で国連やユネスコに人々の「信仰」が集まりつづけるように工作してくる。

 それが今回の「宗像・沖ノ島」の世界遺産登録の勧告である。白人どもはそうやって、常に白人の価値基準に世界中を従わせようとして、餌を撒くのだ。
 奴隷化された日本人は、「白人様ありがたや」「私たちの歴史も認めてくださる」と叩頭跪拝し続ける。

 このたびの沖ノ島の件でも、日本が申請した神社全体は認められず、岩でしかないものはダメだとの見解をイコモスは示して蹴った。岩もご神体という日本人の常識は通じないし、奴らは「野蛮人が何を抜かすか」としか思っていないことの顕われである。
 どうせ、白人優位としか思っていない連中に「審査」してもらったところで、奴らにはその価値はわかりはしない。
 だから止めておけと言うのである。

 別に世界遺産なんて「称号」を白人様にいただく必要はない。土地の人がわかっていて、日本人もわかって大切にするだけで十分ではないか。国の指定史跡、それでいい。
 自然遺産にしても富士山や熊野古道が世界遺産に登録されて、いいことはなかった。支那人のクズどもが押し寄せて大迷惑に及んでいるだけだ。

 それでも日本の小役人は仕事ができ、メディアも記事が書けるから大歓迎だ。

 日本は国連からもユネスコからも脱退するべきである。それが無意味な白人崇拝思想から脱却する第一歩になるだろう。




posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☁| Comment(2) | エッセイ | 更新情報をチェックする

2017年05月05日

小説『あのころはそれがプルメリアだった』(第15回 最終回)


〈そして、それがまた……〉

 プルメリア島から、日本人捕虜を乗せた船が出港しようとしていた。
 アメリカ軍は、捕らえたか投降してきた日本人を、鉄条網を張りめぐらした空き地に、粗末なテントをはって収容した。
 その数が、50,100とまとまると、軍の輸送船に乗せてハワイへ移したのである。その輸送船が、ゆっくりとプルメリアの桟橋をはなれていく。むろん見送る人もない。ドラも鳴らない。
 船からながめると、市街地は砲弾で焼けただれて、見るかげもない。プルメリア名物だった製糖工場の四本のエントツも、かろうじて1本残るのみである。

 捕虜になった日本人たちが、戦争でこわれた建物をかたずけさせられていた。カナカ族はチャモロ族、朝鮮人たちは、ほとんどがすでにハワイに移されていた。
 アメリカ軍の飛行機が、爆弾のかわりにDDTを戦場のあとに降らせていた。

 小雨が降っていた。遠くの山々はけむっていたが、緑は濃いままであった。海鳥が何ごともなかったかのように港の中をとんでいる。波打ちぎわには、米軍の水陸両用戦車や上陸用舟艇が、破壊されたままのこされていた。赤くサビだしているものもあった。
 雨のせいもあって、疲れきった日本人たちは、ほとんどが船の中で横になっていた。

「夏草や つわものどもが 夢のあと・・・」
 デッキに立ってプルメリア島を見ていた初老の男がつぶやいた。
「先生。先生じゃありませんか」
 いつの間にか、となりに来ていた少年が、男に声をかけた。
「先生、ぼくです。」
 と少年は歯を見せて笑い、ぞうきんのようなヨレヨレの帽子をとった。
「おう、君か。生きていたのか」
 先生と呼ばれた男は、少年の肩に手をおいた。

「はい。先生もご無事で!」
 初老の男は国民学校高等科の教師であり、少年はそのかつての教え子だった。
「君は製糖工場に勤めていたんだね」
「そうです。最後は野戦病院の手伝いをしていて……。先生は?」
「私か?島の北へと逃げたんだが、最後は洞くつにいるところを米軍にみつかった」
 ふたりはしばらく、あれが映画館だ。あっちが国民学校だなど指さしあっていた。

 甲板にいたアメリカ兵が、手まねきしている。行って、兵の指す海をのぞく。
「ゼロセン」
 アメリカ兵がポツリと言った。
 白っぽいサンゴ礁の海底に、なにか黒いかたまりがあるのがわかった。零戦が撃ちおとされて、ここに沈んでいるらしかった。船がすぐそこを通過するとアメリカ兵はどこかに行ってしまった。

「先生。この戦争はまちがっていたんでしょうか」
「どうしてかね」
「だって、アメリカはものすごく物資が豊富です。捕虜のぼくらにも、たくさん食べさせてくれたし、チョコレートまでくれました。武器も弾薬の量なんかも日本軍とは比べものにならなかったじゃないですか。戦車も飛行機も、なにもかも日本軍の百倍はすぐれていて、たくさんあります。こんな相手とどうして戦争をしたんでしょう」
「……」

「ぼくらは、精神力で勝てるなんて言われてきましたけど、日本軍はぼくらに何をしたというのです。戦えとも逃げろとも、どこへ行けとも教えてくれない。ただ、食べ物をよこせ、薬はないのか。それだけでした。これで必勝の信念なんて、だれがいうことをきくんですか?」
「なぜ、アメリカと戦争をしたのか。それは国が、つまり国の支配者が必要だったから、としか今は言えない。われわれ国民に必要な戦争ではなかった。負けたから言うのではないが、私は、なぜ国にとって戦争が必要だったのか、疑問におもっていた。アメリカと戦うために必要だったのか、それとも国民を従わせるために必要だったのか、どちらに重点があったのだろうか、とも考えたりしたものだ」

「でも、先生たちは、日本のやり方がすべて正しいと言ってこられたのではないですか」
「そうだね、ちがうとは言えないね。この時代だったから、そのように君たちに教えるしかなかった。しかしね、私は自分の教えていたことが、全部正しかったとは言わないが、全部まちがっていたとも思っていない。なにごとにも絶対ということはないんだ。そこを日本人はまちがえたのではないかと思う」

「おっしゃることがわかりません」
「日本は、この戦争をすすめることや、このままの社会秩序だけが正しいと、思いこみすぎたんだよ。だから、他の国のことや、他の国の人たちのことを虫ケラのように思ってきた。それぞれの国は、正しいこともまちがったことも、あわせ持ちながら生活している。これは欠点も長所もあるということではない。あることは、正しくもまちがいにもなるということだ。どこまで行っても、正しいなんてことは絶対にただしいなんてことはない。海が平らだと主張するのは、今ここで見ている範囲なら絶対に正しいが、地球全体として見ればまちがいになる」

「では、何を正しいと信じたらいいんですか?」
「何が正しいかは条件しだいだ、と考える柔軟性が必要ではないかな」
「そんなこと言われてもこまります」
「これからの日本は、君たち若者が創りなおしていくだろう。だが、アメリカのものの豊富な暮らしを見てしまった君たちは、今度は、このものの豊かなことだけが正しいと思いこまなければいいが、と先生は思うのだ」
「だって、食べられないより、食べられるほうがいいに決まっています」

「それだ。君たちはそういう社会をつくるだろう。アメリカのやり方がすべて正しく、いままでの日本のやり方は全部だめだと、否定してしまうだろう。
 戦争には負けた。たくさんの人が死んだ。しかし、戦争は勝ち負けだけではない。また悲惨な面だけ見ても後世の日本のためにはよろしくない。人間はパンのみにて生きるにあらずと言うように、プライドや名誉を忘れてはいけない。つまり私たちは名誉と誇りのためにアメリカと戦ったのだということを」

「でも、先生。アメリカ兵に写真を見せてもらったのです。アメリカの町には自動車がたくさん走っていて、どの家にもラジオがあって、電気でうごく冷蔵庫もあって、庭には芝生があって、畑をたがやすのだって大きな自動車で……」
「そうだね。日本人は貧しすぎるからね。もうだれも、心の清らかさや、闘う魂を大切だとは言わなくなるかもしれないな。それを教えたかった私は、教師としてまちがっていたとは思わないが……、ただ、闘う魂の問題を度はずれに考えて、それが日本人だけにあって、プルメリア人やアメリカ人にはないと考えだしたのがまちがいなんだよ」

 さきほどのアメリカ兵が寄ってきて、空をあおいでから親指を立てた拳で甲板の下を指さした。雨にぬれるから船室に入れというのであった。
 船はサンゴ礁のリーフを出て、太平洋に入ろうとしていた。
 海の色が変わった。



posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☀| Comment(0) | エッセイ | 更新情報をチェックする

2017年05月04日

小説『あのころはそれがプルメリアだった』(第14回)


〈落ちる人々〉

 その日本陸軍中尉は、鉄条網でかこまれた捕虜収容所から一人だけ出されて、アメリカ軍のジープに乗せられた。この中尉は英語を話せるのであった。
 ジープは、ぬかるんだ道をフルスピードでとばしていく。中尉は必死になにかにつかまっていないと、ふり落とされそうだった。
 まわりの畑は一面焼きはらわれ、ところどころ壊れた米軍の戦車や、日本軍の戦車がそのまま野ざらしになっていた。上空にはもう米軍機は旋回していなかった。砲声もやんでいる。

 プルメリアの戦争は、すでに大勢が決していた。日本軍は島の北部に追いつめられた末、最後の、自殺でしかないやけくその突撃をして、失敗におわっていた。あとは、ジャングルに、統制も連絡もとれていない小グループの敗残兵がのこっているだけとなっていた。
 ジープは、断崖を見あげる海岸の岩場にとまった。
 アメリカ軍の少尉が、日本軍の中尉にだまって双眼鏡をわたし、あごをしゃくった。崖のほうを見ろというのである。

 中尉は双眼鏡をとって崖を眺めていった。崖のあちこちに、軍艦からの艦砲射撃による穴があいている。白い崖の上に、ぽつぽつとモンペをはいた女や子どもが見える。草地にしゃがんでいる人も、木立の間から沖のほうを眺めている人もいるようであった。と、一人の女が両脇に丸裸の子どもをかかえると、ハッと崖から身をおどらせたのである。中尉は息をのんだ。海面をさがしてみたが、落ちた人はあらわれなかった。
「見えたか」
 アメリカ軍の少尉がたずねた。苦い顔をしている。日本軍中尉は双眼鏡から目をはなしたが、声がでなかった。

 「昨日からだ」とアメリカ軍少尉が言った。「あの崖では、非戦闘員の女や子どもがつぎつぎに海に身を投げて自殺している。わが軍としても放っておけないので、なんとかやめさせたい。しかし、あの崖の上にはまだ日本兵が残っていて、すぐには地上部隊が近づけない。海上でも救出しようとしているんだが、日本兵が発砲して救助をこばむ。われわれもスピーカーで大声で説得しているが聞かない。だから、ああして死んでいくのを手をこまねいて見ている。そこで、日本軍将校の君に、日本人として、日本語で彼らに思いとどまって降伏するように、説得してもらいたい」

 ジープを運転してきた軍曹も、真剣な表情で日本中尉に話しかける。
「このスピーカーなら崖の上に届くんだ。彼らに、両手をあげてわれわれのほうへ歩いてくるだけでいい、と伝えてくれ。これがマイクだ」
 だが、中尉は頭が混乱した。兵隊が死んでいくのはいくらも見てきた。しかし、兵隊でもない人たちがつぎつぎに自殺していくのは、まったくちがったショックだった。

 だが中尉は日本の女たちがなぜ自殺していくのか知っていた。日本軍は、戦争のはじまる前から、敵につかまるとひどい目にあうから、捕まるくらいなら死ねと、住民にも言ってきた。アメリカ軍上陸後、ジャングルを逃げまどう島の人たちを、日本軍ははじめは保護したい気持ちはあったが、どうにもならないのでついには邪魔もの扱いしてきた。中尉自身も、捕まるよりは死ぬべきだと思っていた。それが、自分が負傷したために、捕虜になってしまったせいで、今度は死ぬのはやめろと呼びかけなければならない羽目になったのである。

「なんと言えばいいのか」
 中尉はやっと口をひらいた。
「え?それは、君たち日本人どうしの問題なんだから、どう言えばいいのか君のほうがわかるはずだ。ただ、投降してくる者には、われわれが安全を保障する。それは言ってくれ。彼らが思いとどまるように言ってくれればいいんだ。」
 こともなげに米軍の少尉は言った。
「私には言えない。なんと呼びかけたらいいのだ。だいいち、軍人が降伏を呼びかけても、彼らは信用しないし、聞かない」
 マイクをもどしながら、そう中尉は答えた。

「なんだって?」米軍少尉が言った。「あれは兵隊じゃないんだぞ。女や子どもが死んでいくのを見殺しにできるのか」
「しかたがない。われわれは負けたのだ。生きてはずかしめを受けるより、死を選べと日本人は教えられている。われわれには誇りがあるんだ」
「だが、君は生きている。捕虜となっているじゃないか」
「そのとおりだ。しかし、私は負傷して動けないところを捕まった。こうなるつもりはなかった。そういうひきょうな軍人が、あの追いつめられて死のうとする女たちに、言う言葉なんかあるわけない」
「わからん」米軍少尉は肩をすくめた。「どうして死ななければならないんだ。もう戦闘は終わった。しかも兵隊でもない。では、軍人でない日本人が呼びかけてはどうか」

「それはむだだ。軍が島民を見捨てたばかりか、海のむこうの日本が、プルメリアの日本軍と島民を見捨てている。しかも島民どうしで敵対し、見捨てている。日本は西欧のような自分も他人も認めて、その信頼関係で生活している社会ではない。自分の集団の利害のために他人を裏切って平気だ。そういう社会をつくり、寄生しあうように生きてきた。とくに女は男に従わされてきた。女たちは、いつも何かにすがって生きてきたが、そのすがれば何とかしてくれるはずの社会がなくなったのだ。自分独りでは生きられないと女たちは思っている。だから、足元の地面がなくなった気がして死ぬのだ」

「そんなことはない。君たちはじゅうぶん戦った。勝負はついた。何ももうこだわらなくていいんだ。わが軍は抵抗しない者は殺さない。もう一度生きるチャンスをつかめばいい。それを、われわれの代わりに言ってくれればいいんだ」
 中尉は首をふってうつむいた。

「おいジャップ!」とつぜん米軍少尉は、真っ赤な顔で中尉の胸ぐらをつかんだ。「君ら日本人がなぜ負けたのか、そのわけを言ってやろうか。兵力の差があったのは当たり前だが、根本は日本人自身の問題だ。日本人は侵略者だ。このプルメリアに対してもだ。それなのに、今は国を守るなどと被害者みたいなことを言っている。おかしいと思わないのか?」
 中尉は顔をキッとあげて「日本は侵略者じゃない」と反論した。「アメリカが日本を戦争に引きずりこんだんじゃないか。ここでそんな事を言ってもしょうがないけれど」

 米軍少尉はそれにはかまわずに。「そういう君たちには自分の意志がないじゃないか。君らは自分の意志で戦ったんじゃない。君たちは、まわりの日本人がある考え方をしているから、それにあわせる、ことよせるだけなのだ。波のまにまにゆれるクラゲだよ。クラゲは潮がひいて浜にとり残されたら、どうにもならない。あの崖の上の女たちのようにどうしたらいいのか、わからなくなってしまうのだ。国家が、仲間が、一人の意志ある人間を見捨てたからと言って、どうして死ななければならない?」

 米軍少尉は中尉を突きとばし、なおもしゃべりつづけた。
「ともかく生きのびることだ。自分の味方は自分でしかないじゃないか。われわれは君が日本軍の中尉だとは知っているが、本名は知らない。なぜ名乗らない? もう戦争は終わったんだ。自分の意志でこの戦争に参加したのなら、個人の名前が言えるはずだ。あの崖から飛びおりる女も、自分の意志でプルメリアに来て、生活していたのなら、いつどこで、どうやって死んだかわからないような、そんな死に方をするだろうか。

 意志というのは、ただああしたい、こうなってほしい、なんとかしてくれ、そんなものじゃない。それでは一方的に自分のやりたいことを思う気持ちだ。しかし、意志を通そうとすれば必ず相手がいる。その相手のことを考えて、どういう条件なら、相手にも自分にもいいようになるのか考えたうえで決断することが意志なんだ。日本人諸君はこの戦争を始めるにあたっては、支那の立場、アメリカの立場、いろいろと相手の条件を考えたのか。ただ、自国の利益ばかり主張したのではないのか?」

 中尉は、自国の利益のために戦争をはじめたのはアメリカのほうだと言おうとしたが、どうせ聞き入れられないと思って黙っていた。
 「君たちは自分の利益だけというせまい考えで戦争をおこしたのだ。もっと大きな視点に立つべきだ。」と米軍少尉は続けた。
 社会は、自分のことを考える必要はあるが、自分と他人のことも同時に考えることでなりたっている。そういう社会の仕組みを無視して君たちは自分のことだけを押し通そうとした。だから世界から仕返しを受け、歴史に踏みつぶされる。現に、このプルメリアで、君たちは踏みつぶされたじゃないか。

 ……みろ、あそこでまた、女がひとり落ちていく。われわれは、ただかれらが死んでいくのが、人間として気の毒と思うから救助しようとした。しかし、そこから先、チャンスをいかして、かれらが人間としてまっとうに生きていくかどうかまでは、知らない。かれら自身の責任だ。その第一歩の手をさしのべることすら、君にはできない。負けるが勝ちなんてこともわからないのか。それがわからなければ、また日本人は同じことをくり返すのではないか?」
 米軍少尉は軍曹にふりかえって、あごをしゃくり「もういい、連れて帰ろう」といった。



posted by 心に青雲 at 04:00| 東京 ☀| Comment(0) | エッセイ | 更新情報をチェックする